一生役立つお得な知識〜「色彩」の授業から

 1年生の授業で「色彩」の学習をする。
 最初は鑑賞から。自然界を含め、身の回りにあるモノを取り上げ(美術がいかに生活に密着したものであるかも感じ取らせたい)色彩をまとめる法則性を発見してもらうことからはじめる。類似色でまとめたものと、対照色でまとめたものを見せる。生徒はその法則性に気がつく。
 こうして、さらに多数の鑑賞教材を見せながら、色彩をまとめるための基本的な原理として
「類似・対照(アクセント・コントラスト)・グラデーション」の3つがあることを教える。
「色彩の学習」はここからスタートする。
 一般の大人の人たちは日常生活の中で、「色相」とか「彩度」とかは、あまり言わないけれど「同系色」とか「アクセント」という言葉は使っている。インテリア・ファッション・料理、実に身近だ。
自然を見て「きれい」と感じるときも、この原理を当てはめることができる。さらに「自然から学ぶ」という視点も加えている。
 生徒に言う。「これは、一生役に立つ、お得な知識です。」と。
 実際にこの知識が作品制作で生かされる。色を「意図的・計画的」に使うことに「おもしろさ」「わかりやすさ」を感じるようだ。制作中は「配色カード」を使うので、当然、「混色」もするようになる。全体の調和を考えるために「作品から離れて見なさい」と言う。「統一と変化」「全体と部分の関係」などが、制作を通して感覚的にもわかってくる。
 生活を心豊かに暮らしていくためにも「美術」は大事な教科だ。また、それを一般に広く認知してもらう工夫も必用だ。
 ある生徒が「総合学習」の中で「美しい街並と色彩」について研究した。自治体でもこのことに取り組んでいるところも増えてきた。「総合学習」で「地域」「環境」「共生」などに取り組んでいる学校もあると思う。「色彩」もテーマにするに十分な価値があると思う。
 生活と美術、身近な視点も大切にしたい。色彩の学習もこんな視点でやっている。

                     2004年1月 山崎正明

☆04年7月10日追記
 札幌市の「大規模建築物等色彩景観ガイドライン〜札幌の都市景観色70色」が6月末に完成し、さらにデータをダウンロードできるようになっている。その資料の中に「カラーボキャブラリー(配色語彙)」という言葉があった。
「個人的な配色の好き嫌いは、かなり早い時期に決まるようです。」と説明されており、それが決まっていくために3つの条件があげられていた。
 さらに「毎日見ている景観は、そこに住む人の感性を育てることにそのままつながります。」と結論が述べられている。
 「カラーボキャブラリー(配色語彙)」という言葉を少し難しいので、「色彩感受力」とでも言えばいいのだろうか。なるほどと思わせる概念なので、授業で育てる力として考えていきたい。
先の資料では「カラーボキャブラリー」が、無意識のうちにできあがっていくという説明されているが、教育の場でも培われていくものもあるはず。
 今回、札幌市の取り組みから美術教育でやるべきことの一つが少しはっきりした。美術の「有用感(役に立つ)」の部分が、子どもにも大人にもわかるようにすることも必要だろうと考えていたので。
 「都市景観」という概念があることを、札幌市の中学生全員が知るのと知らないのとでは、札幌市の10年後、20年後が違ってくるように思う。
 限られた授業時間なので、「都市景観」の授業を独立させることは難しいかもしれないが、鑑賞や色彩の学習の時間に紹介したり、関連づけて考えさせることはできる。
 生涯教育としての基礎を培う「美術教育」の必要性を訴えていかなければならない。
また、そのような視点での実践は非常に重要と思う。