2年生「 MY MARK 」

中2「マイ マーク」での「学ぶ姿」

 中学校2年生「マイ マーク」という「自分をマークで表す」という授業です。
一辺18センチのケントボードにアクリルガッシュで仕上げています。

 題材のねらいとしては、中学校2年生という難しい時期に自分を見つめる機会をつくりたいということ、そして自他のよさについて感じて欲しいということが根底にあります。
 また造形の面では、1年生のときに学習した「類似・対照(アクセント・コントラスト)・グラデーション」という学習を、生徒自身のものとし、大人になっても生かせる力とすることや形の美しさを自分なりに追求することをねらっています。
 そして自分の頭をたよりに新たな美しい色と形を生み出す面白さを味わって欲しいと思いました。生み出す面白さを考えたとき、平面の仕事ではありますが、厚さ2ミリのボードを使用することにより、作品を完成させたとき、物体としてこの世に生まれてくるとい感覚も大事にしたいと思いました。
 おまけに作品をホームページで公開も予告。作品もまた違って見えるはず。

LinkIcon生徒全員の作品←現在このサイトはありません。




 この題材は9時間かけています。(そのうち鑑賞と色彩の学習で2時間弱なので実質7時間)
1年間の授業時間数を考えたとき、課題も残りますが。

 授業の最初の2、3時間目までは生徒は多いに悩みます。というより苦しいといったほうが適切かもしれません.
私もこの題材ははじめてなので、この出だしは、本当にこの題材でよかったのかという不安がよぎりました。
 しかし、ケントボードに下がきをはじめる頃になると、グンと集中しだします。(ただ6クラス中1クラスだけ、私語の注意をしなければならない時がありました。生徒の実態の応じた授業作りという面でまだ甘いのだと思います。)
 この集中性はどんどん高まりました。「自分」を表すということや小さな作品であるという安心感も生徒の意欲を引き出していると思います。

 葛藤しつつ集中するという学びの姿が見えました。

*マークの案を考えるとき、様々なモチーフを検討している生徒。
*納得するまで、時間がかかろうが数々のアイディアを出すことに挑戦する生徒.

*S字状の形を描くのに2時間を費やした生徒。何度も何度も見直しながら形を整えていました。最初はあまり気乗りしていませんでしたが。出来上がったときの笑顔。非常によい表情でした。
*一本の美しい曲線を描くのに、方眼を描き、点を打ち、点を線で結んでいる生徒。その方眼は消しゴムで消され残ったのは一本の線。なめらかで美しい線でした。
*美しい曲線を生み出すために、厚紙で大きな円をつくってきて、それを定規として描いていた生徒。数本の線のためです。

*マークの色は2色なのに、その色を決めるために、配色カードであれこれ考える生徒。結局は青と白なのですが、その白にほんの少しだけ青を加えていました。本当にきれいな青でした。
*色を決めるのには配色カードをもとに、何度も別の紙に試し塗りする生徒。デリケートな色づかいでした。
*自分のイメージとあわないと言って、再度真剣に色をぬり直す生徒。
*早くできた生徒は2作目(色違。まったく違った作品でもよい)をつくるように指導しているが、このために家で下がきを完成させてくる生徒や、3作以上つくる生徒も。

これらの価値ある学びの姿は作品だけ見ていても、わかりません。

上の写真を見ると、生徒のその時の姿が頭に浮かんできます。
葛藤しながら、美を生み出そうとする姿。色や形についてこだわる姿。
そして真剣に制作している姿。

 美術教育について作品を通して語られることが多いですが、この学んでいる姿をもっともっと話し合っていくべきだろうと思っています.題材を通してどのような力を育んでいこうとしているのかということが、教科の存在理由とともに語りあうことが大事だと思います.
 題材の技法指導の方法や材料や手順の話になりがちですから。

生徒には「完成した作品も大事だけれど、描いている今の瞬間が大事だと思う」とか「たくさん悩んで下さい。悩むということは美しいものを生み出そうとしていることです。」とか話しています。生徒自身にも美術の価値をうまいとかへただとかそんなふうに思ってほしくはありません。
この授業が終わったとき、生徒に次のような主旨のことを話しました.
「これだけ、集中していたし、多いに悩んだから、美的感覚は高まっているからね。ただし、テストの点数で表せるようなものではないけれど。本物のよさを見抜く力も身に付いてきているよ。そして、今回自分って何だろうかと考えたことも大事なこと。」

(この題材について別の視点から考えてみると)

 当然9時間ということが問題です。パソコンのペイントソフトを使う方法も当然考えられる。色の学習では、瞬時に配色を変えることができる面白さがあります。(今回色違いの作品をつくったり、見たりしてその印象の違いに驚いているし、興味をもっていました)
 今回の授業のねらいをしぼってみることも考えられます。このあたりは、美術教育の存在理由と教育課程全体で考えなければならないことです。うーん葛藤。

               2004年11月 山崎正明