基礎・基本をもとに題材と題材が密接に関連しあう

  私が教師になった頃、教育課程の編成をするときに、表現領域は絵画・彫塑・デザイン・工芸の4分野と鑑賞領域を押さえ、それらをバランスよくかつ学年があがるに従って発展していくように構成していた。
 しかし、1992年頃から、石狩管内で基礎基本の研究(注1)に取り組み始めてから、その考え方だけではだめだという事をはっきりと自覚した。
 基礎基本(注2)をもとに、題材で育むべき力を検討していった結果、簡単に言えば
「題材と題材が密接に関連しあう教育課程を編成していかなくてはならない」
 ということを強く意識するようになった。
 また、こうすることで指導内容がシンプルになっていった。
 私たちは教科を通して子ども達にどんな心や力を育んでいくべきなのか、どんな大人に育ってほしいのかを深く考え、教育課程を編成しなければならない。このことを、もっと本気で考えていく必要がある。それは単に「情操を養う」などというものではなく、より明確に。
 中学校教師は小学校の学習内容を把握しておかなければならない。さらに幼稚園も(注3)。現行学習指導要領において、小学校と中学校の系統性の面で疑問を感じる部分もある。
 また、どんな大人になって育っていってほしいのかも考えていく必要があるし、美術が世の中に果たす役割(注4)ももっと意識する必要もある。
 教育課程を編成するにあたり、領域や分野のバランスや発展性を考えるだけでは不十分であると思う。それでは、まだ題材を配列しただけにすぎないのではないだろうか。極端に言えばデザインで学んだことが彫刻の授業で生きるといったようなことである。
 時間数が確保されていた時期は、適当にやっていてもつじつまがあっていたという面もあった。しかし、これからは、そうはいかない。教科がなぜ義務教育の中で全員に学ばせる必要があうのかということを、社会に認めれなければならない。
 おもしろそうな題材や短時間で成果をあげる題材、子どもがよろこぶ、集中する題材、新しい題材、それもまた大事な事かもしれない。が、それと同時に題材どうしが密接にリンクしあうように教育課程を編成しなければならないと思う。限られた時間数であるから、このことはますます重要になってくるだろう。 
  
 こう書きながら、「石狩の基礎・基本を再考しなければ」と自分に言い聞かせている、日々に追われ、この大仕事はなかなか手につけられないでいる。(注5)
(注1)
「1995年全道造形教育連盟95いしかり千歳大会」研究主題「豊かな心と確かな力を育む造形学習を!」で、基礎基本の考え方を発表。なお、このときの研究資料はダウンロード資料集にあります。(下をクリックしてください)
(注2)
豊かな心と確かな力を育んでいくための基礎基本として3つに大別した。今もそれが石狩のベースになっている。今後も見直しをしていく必要がある。
(日本文教出版「形Forme」No.265に石狩の田坂肇先生が「子どもたちに育んでいきたい基礎・基本」の中で「石狩の考え方」を要約した文章を発表。)
(注3)
いしかり千歳大会で幼稚園の先生とも共同研究で授業づくりをしてきた。学ぶことがあった。今、地元の北広島市の「大地太陽幼稚園」の取り組みに注目している。坂本園長からも多くを学ばせていただいている。園の職員室の書棚に中学校の研究図書もあった。
(注4)
私のサイトのリンク集に「背景」を加えたのは、このため。
(注5)
 2008年石狩で全道造形教育研究大会が開催されることになった。これを機会に「基礎・基本」の改訂をしたい。直したい部分が出て来ている。(石狩の基礎基本は美術でなければできないことという面が弱い)やるなら全国に発信できるようなものにしたいし、一般の人が見てもわかる内容にしたい。
 あらためて、日本の美術教育の歴史の見直しや、子どもを取り巻く環境の変遷、現代の子ども像とこれからを考えていかなければならない。先行研究も見直したい。これは大変なことになりそうだ。

                     2004年3月 山崎正明