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更新日 2018-07-27 | 作成日 2018-07-27

1年生 鑑賞「カントリースクール」

ウィンスロー=ホーマーの「 カントリースクール」

 1年生の授業で日本文教出版の教科書にある「カントリースクール」ウィンスロー=ホーマーの作品を対話型で鑑賞しました。教科書派見開きでA3の大きさです。教科書には作品の解説が書いてあるけれども、それは今は読まないように指示。
今回は机を下げて車座にならず、前向き一斉の形です。発表は列ごとに順番に答えてもらったあと、自由に発言。時間は30分(ちょっと短い)。指名発表をしたのは全員が発言することをねらってです。

 最初に「絵をよく見て自分が一番印象に残った描いてあるものを発表してもらいます。じゃ絵をよく見て。」2分くらいしてから「では絵の中に入ってください。つまり絵の中に光景の中にそっと入っていろいろなものを見てきてください」と加えました。そのあと列ごとに指名です。
数人が発表したところで「こうやってみんなが興味を持つところが違うからおもしろいんだよね。」とコメント。さらに描いてあるものを発表してもらいました。
そのあと「絵の中で何が起こっていると思いますか?」(アレナス氏が使う大事な言葉)で、発表してもらい、生徒の発表した言葉から、描かれている人物について注目するように方向付けしました。するとその描かれている子どもたちの気持ちを想像したくさん話してくれました。
 「いやいや授業を受けている感じがする」「先生の方を向かないで勉強している子は、きっと優等生かな?」「泣いている子の横の女の子は、ちょっと心配しながらも、そのくらいのことで泣かないでって思っているような気がする」とか…こんな感想が出てきますから、私もおもしろくてたまりません。
 そして最後に「この絵の感想を言ってください」と言いました。
するとこんな答え(要約)がかえってきました。
「絵を描いた人は優しい気持ちでこの子ども達を見ていると思います。みんな年齢も性格も違うけれどもみんなを認めているような感じがします。描いた人は自分が子どものときのことを思い出して描いているのじゃないかな」
「作者は、世界が平和になってほしいと思っているんじゃないかと思います。この絵にはいろんな子どもが描かれているけれど、みんな優しい気持ちで描いている。ちょうど世界にいろんな人種がいるけれども、みんなを認めあうというか」
「この絵の色の使い方を見るととっても暖かな色で描かれていて、優しい感じをすごく出そうとしたのだと思います。最初にカーテンを見た時そう思いました」
生徒がこの絵を見てここまで感じ取るんだなということと、様々な感じ方や考え方を教室内で共有し、自分の絵の見方を広げ、深めていっているようです。
 授業が終わったあと、あー、子どもって新鮮な目でものを見るなあ、よく、ここまで感じとったものだ、と関心してしまいました。それにしても生徒の最後の感想には感動しました。この絵から平和が語られるなんて。でも言われてみればそうだよなあ。すごい!
 ふと思い出しました。昔やっていた作品の解説的な鑑賞授業とは明らかに違います。子どもの中で育つものが。ただ全てが対話型鑑賞授業でということにはならないと思っていますが。
 ねらいによって違ってきます。うーん、楽しかった。

この授業はブログ「美術と自然と教育と」で公開したものですが、この授業について大橋功さん(東京未来大学・日本美術教育学会事務局)から以下のようなコメントをいただいています。
「この記事を読んでとても嬉しくなりました。
この教科書をつくった者のひとりとして、このページでこれだけの子どもの反応があったことに感動します。
実は、このページにこの作品が掲載されるようになるにも様々な議論、検討、そして紆余曲折がありました。著者メンバー全員で本当に真剣に真剣に検討して出来上がったページの一つです。
心配もありました。どんな心配かはここでは述べませんが、どのように受け取られるか、ということは常に考えます。一番大切にしていることは、この教科書に触れる中学生にとっての意味ですが、それと同じくらい大切にしているのは、人権についてです。この絵から、中学生たちがこのようなよみとりをしてくれていることに本当に嬉しく思います。
他の教科の学習でも同様でしょうが、人間教育としての側面がこれほどストレートに見られる教科はそれほどあるとは思えません。」

2006年9月